今までたくさん、コンクールで心が壊れてしまう人、
人間関係が悪くなってしまう人たちを見てきました。
今日はコンクールを受けたい人や、受けるのが辛い人に向けて書きます。
コンクールに参加する方へ。
私も含めて、コンクールを受ける立場の方々へ。
皆さんはコンクールをどう捉えていますか?
「自分のやる気を向上させたい。」
「人に認められたい。」
「人に感動を与えたい。」
人それぞれ何かしらの理由があって受けると思います。
ただ、
「他の参加者と競い合ってその人に勝ちたい。」
「あの人より自分は上手いということを証明したい。」
という理由の人。
入賞できなかったり、予選で落ちた時に
「あの人よりも私は下手だったんだ」
と落ち込む人。
その人たちは
まだ本物の音楽家ではありません。
音楽はそもそも、人と競い合うものではないから。
“自分” と “作曲家” と “音楽” と “聴衆” というものがあって、
その中で自分の納得のいく音楽ができずに落ち込むならわかる。
きっとまだまだ成長できる。
審査員もただの人間なので完璧な審査なんてできるわけなく、
その時の審査した人たちの好みや価値観によって、
どんな結果にもなりえるので審査員にすら結果はわかりません。
そのコンクールを牛耳っている審査員や組織がいない限り。
大きな権力を振りかざす人間がいない限り。
結果は結果。
もちろん、1次、2次、3次…と、短期間で演奏するコンクールで入賞することは本当に素晴らしいことです!
体力も精神力も尋常じゃないものを要求されるから。
それは称賛されるべきこと。
しかし結果というのは、
それ以下でもそれ以上でもなく、
予選で落ちたとしても優勝したとしても、
その人が本物の音楽家であるかないかを決めるものではありません。
コンクールなんかに未来が決められる人生を送りたいですか?
未来を決めるのは自分です。
親御さん、保護者の方へ。
コンクールは確かにビジネスです。
需要があるからコンクールが開催される。
でも、コンクールの使い方を間違えないでください。
自分の歪んだ欲求を満たすために子どもたちを使う親をたまに見かけます。
コンクールに出場した子どもが良い結果を出すこと自体は喜ばしいことですが、
子どもたちは、親が優越感を得るために音楽をやっているわけではないのです。
周りのお友達に自慢できる…!
自分の子どもの方が他人の子どもより優れている…!
それは井の中の蛙。
子どもたちは生まれてきただけで尊いのだから、
たかがコンクールでうまくいこうがいくまいが、
子どもたちへの愛は変わらないはずです。
子どもは「本当に自分のことを思ってくれているかどうか」をすぐに見抜きます。
子どもの敏感さをナメない方がいい。
「音楽」と「子ども」を、歪んだ欲求のために利用しないでください。
そして、子ども自慢などをする人が周りにいても、
全く気にせずに自分の子どもを愛してください。
もし周りに子供同士を比較するような親がいたなら、すぐに離れましょう。
そんなコミュニティーにいる必要などありません。
音楽ファンや、マネジメントの方へ。
どうか、演奏家たちに対して
「あの人はあのコンクールで入賞してるからすごい」
「一次予選で落ちてるから駄目だ」
などという結果のみでレッテルを貼らずに、
あなたが感動したかそうでないかで判断してください。
「あのコンクールはレベルが高い」なんて一概には言えません。
その年の、その審査員だったから納得のいく結果になったり、そうでなかったりするだけです。参加した人たちのレベルにも寄る。
その年によって同じ銘柄でも味が変わるワインと同じです。
審査結果なんてただの目安にすぎない。
残念ながら審査する先生方の中に偽物が混じっていた場合は、その不純物のせいで結果が歪められることもあるのです。
もし感動する音楽をする人がいたら、あなたにとってその人は本物なのだから、どうか応援してあげてください。
審査をする先生方へ。
あなたがたが音楽をわかっていると仮定して、本物の音楽家だと仮定して…、
どうか音楽に誠実になってください。
音楽をわかっていない・音楽的な耳を持っていない先生方は、
自分の生徒を入賞させることしか考えられなかったり、
メカニック的な技術や表面的な情熱に騙されてしまう。
審査をする「先生」と呼ばれている方たちには先生としての立場があるけれど、
その中には、本物も居れば、残念ながら素人同然の偽物も居る。
自分を偽物だと思っていない偽物たちはどうしようもないので…、
本物の音楽の耳を持っている先生方、
自分の生徒に高い点数をつけたくなる気持ちはわかりますが、
どうか純粋に “音楽” だけで審査することを心がけてください。
音楽がわからないのなら、どうか勉強してください。
歳を重ねても学びが終わることはありません。
社会の中で生きていくのなら、
日々、変化・発展している社会に合わせて、
人間も学び続けて変化・成長していくことが大事だと思います。
変化が成長になるとは限らないけれど、
成長には必ず変化が伴います。
どうか変化を恐れず、学び続けてください。
そうすれば、音楽界は少しでも良い方向に向かうと思います。
まとめ
最後に
手塚治虫のブラックジャックという作品の中で気になった言葉を引用します。
「人の目で見える一番暗い星を六等星と呼んでいる。
その100倍明るい星が一等星だ。
(一等星を指差して)一等星はあのでかい星だ。
六等星はほとんど目に見えない微かな星だ。
だがな、ちっちゃな星に見えるけど、あれは遠くにあるからだよ。
電気の明かりも近い方が明るく見えるだろう?
本当は一等星よりももっと輝いていても、地球から遠くてわずかな光しか届かない星もある。
一等星よりもずっと眩しく輝く星が、地球から遠いというだけで六等星として扱われる。」
本物だとしても今の世の中では埋もれてしまう人も沢山いる。
すぐ近くの目に留まるものをもてはやしがちな世の中で、
本物の音楽家がもっと増えること、本物を本物だと感じられる心と耳を持った人が増えることを願ってやみません。
演奏家たちは、自分が信じる音楽の道を貫こう!
演奏家としての自分を売り出していく能力が必要となっている現代ですが、今の社会だからこそできることも沢山あると思います。
やっていく上で辛いこともあるかもしれないけど、聴いてくださる人と音楽の喜びを共有できたら嬉しいですよね!