私の友人がこんなツイートをしていました。
エリック・チェンのAmerica’s got talent出場映像が公開!
世界大会優勝時から新現象も追加。「ほとんどのマジシャンが、俺がやったぜって見せ方するけど、君は…君が驚き困惑している!最高!」
って審査員コメント。https://t.co/PfS6Opknf7— 謳歌Ouka/パフォーマー (@performerouka) May 29, 2019
この動画のマジックに私はとても感動したので是非みなさまにも観ていただきたいのですが、このマジックの人がやっていることは、
・マジックを提供する自分
・それを観て観客と一緒に驚く自分
の2つを同時にやっています。
これは演奏にも必要なことです。
https://twitter.com/Shimon_Sano/status/1133626227112022016
演奏家としての自分、聴衆としての自分
タイトルの通り、
演奏中は2つの視点が必要です。
弾いている自分と、聴いている自分。
「演奏している自分と、それを指揮している自分を作りなさい」というアドバイスはレッスンで言われたことがある人が多いのではないでしょうか。
なぜ弾いている自分だけでは足りず、
聴いている自分の存在が必要なのか。
答えは簡単です。
人前で演奏するということは、不特定多数の誰かに対してスピーチをするようなものです。
その時に、観客の反応を全く感じようとせずに喋っていたらどうでしょうか?
…伝わるものも伝わりませんよね。
スピーチする人は、同じ空間と時間を共有しているという感覚を持つことで初めて人に何かを伝えることができます。
楽器の演奏も同じです。
自分の音を聴いて空間への意識を感じることで、
聴いている人と大きな感動を分かち合うことができます。
そもそも、自分が聴いていない音を他人に聞かせるなんて失礼だと思いませんか?笑
練習の時から感動を忘れない方法
練習で感動できていないのに、本番で感動しながら弾くのは不可能に近いです。
練習し続けるとだんだんマンネリ化してくるのは、
単純に刺激が足りていないからです。
リズム・メロディー・ハーモニーという音楽の三大要素をどれだけ深く、または高次元で感じることができるか。それが刺激になります。
弾くということだけを意識するとすぐマンネリ化します。
感じること。これがとても重要です。
https://sanoshimon.com/2016/06/08/%E9%9F%B3%E6%A5%BD%E7%9A%84%E3%81%AB%E6%A5%BD%E8%AD%9C%E3%82%92%E8%AA%AD%E3%82%80%E6%96%B9%E6%B3%95/
昨日の記事でも書きましたが、
本当に練習でできることは無限にあるので、マンネリ化することが不可能になります。
冷静と情熱のバランス
Twitterで、
冷静に指揮してる自分と、 感動して聴いてる自分のバランスがすごい大切で、
冷静すぎても人に感動を伝えることはできないし、
感動しすぎても聴いてる人は引いちゃう。
と書きましたが、
感動して聴いている自分はあっていいのですが、
感動して弾いている自分というのはクラシック音楽の場合は聴いている人の邪魔になることが多いです。
私たちクラシックの演奏家は、作曲家の伝えたいことを表現する使者の側面があるため、
自分に酔って音楽をしてしまうとクラシック音楽が歪みます。
(誤解されないように言っておくと「音楽自体」は歪みません。音楽は音楽なので。「クラシック音楽としては」歪んでしまいます。)
もちろん受け取り手の感覚によってどう受け取られるかは変わってくるので、何が正解とは言えませんが、
「作曲家に対する視点」が抜けてしまっている演奏はクラシック音楽の演奏としては良くない、と私は考えています。
ただ、クラシックを商業的に使っていくことは全く否定しません。
なぜなら、そういう活動もないとクラシックに興味を持ってもらうこと自体が難しいから。
時と場合によって、クラシック音楽の使われ方が変わるのは当然です。
私の理想は、作曲家への敬意を持って作曲家たちが表現したかったことを代弁する。
これだけで、この上ない喜びと感動が生まれます。
ただ弾いているのを観るだけでも感動する理由
生でもテレビでも、スポーツ観戦したことがある人なら経験があると思いますが、
「自分の好きな人がやっている」「一生懸命やっているのがわかる」「若いエネルギーがある」etc. こういう理由でも人間は感動します。
内容というよりは全体的な雰囲気に感動する。
こういう側面が演奏にもあるので、
「自分の音が聴けない」とか「空間と時間への意識が足りない」などと言って意気消沈せずに、
自分の理想とは程遠くても今できる最高のものを出すだけで人は感動するので、
あまり自分を低く見積もらずに自分の中の最高を追い求めていってください!
どんなに上手い人でも、自分の理想に追いつくことは一生ありません。
逆に、自分の理想に追いついた時点でその人は成長していないことになります。
私も、自分の理想を見上げるとはるか遠くにあって絶望することがありますが、
地道に自分ができることをする。これ以外に道はないと思っています。
本日も読んでくださりありがとうございました!