ピアノ練習法

音を豊かにするために

今日は、音を豊かにするための私なりの感じ方を一つ。

それは

“右手と左手の間にある空間を感じること”

です!


以前も「楽譜に書いてない音が大事」という話をしましたが、

ハーモニーを調和させて更に豊かな響きにするために、私は左手と右手の間にある空間を感じています。


言い換えると、倍音を感じるということになるのですが
それができる人はもう良い耳を持っているのであとはその耳を使うだけです。



低音のバスを左手で弾いていて、高音の方で右手がメロディーを弾いている状態を考えてみてください。例えば、以前も例に出したこれ。





1小節目の左手の「ミ♭」と、右手の「ソ」のみを考えてください。
この時に「ミ♭」から立ち上ってくるハーモニーのエネルギーを感じて
そのエネルギーを右手の「ソ」が受け取る。

簡単にいえば「音程を感じる」ことなのですが、
そこに左手と右手の間の空間に引力が生じるような気がするのです。


そしてそのエネルギーを感じることができる距離をだんだん遠くしていく。

鍵盤→弦→その先の空間


で、最終的に聴いている人の心に受け取ってもらえるかは聴いている人に委ねるしかないのですが、聴いている人の周りの空間まで音楽を届けないと受け取ってもらえませんよね。


例をもう少し。

バスを弾いた後に両手とも高音で弾く、

もしくは

ピアノ・コンチェルトでオーケストラが低音部分を担っていて、ピアノのソリストが両手とも高音で弾いている状態を考えてみてください。

ショパン:スケルツォ第2番の5〜6小節目


ラフマニノフ:ピアノ・コンチェルト第2番 1楽章〜


その時に、バスの響きの上に乗っているハーモニーとエネルギーを感じてピアノの高音を弾かないと、ピアノの音の響きはヒステリックな金切り声のようになってしまいます。


耳を全く使わず、音量を出すために鍵盤を叩きつけるのは論外ですが、
バスの響きと音色&その上にあるハーモニーとのバランスを耳で捉えた上で高音を弾くことができれば、音は豊かに会場に満ちます。



とにかく、

“楽譜に書かれていない部分を感じる”

ということが音の豊かな響きを作るためには絶対に必要なことだと思います。

私にとってはそれが左手と右手の音程に引力を感じること(左手の親指と右手の親指の間 の空間を感じること)、もしくは低音と高音の空間にあるエネルギーやハーモニーを感じることだったのですが、感じ方は人それぞれなのでご自分の感じ方を見つけてください。



最後に、

良い耳を育てるための簡単な方法!


グランドピアノを持っていない 、持っていたとしても練習する場所の環境によっては大変かとは思いますが、
できるならばグランドピアノの蓋を全開にして練習してください。
そして暗譜している曲であれば、譜面台も倒す or 譜面台をとって練習してください。

そうすることで良い響きと悪い響きを耳で聞き分けることができるようになる確率は格段にあがります。
蓋を閉めて篭った音だけで練習していると、いつまで経っても指の練習になってしまう可能性があります。


耳の良いピアニストなら、
アップライトピアノであってもどんなタッチや耳の使い方をすれば本番でどんな響きになるのか想像することができますが、きっとまだ耳が鍛えられていないピアニストにはそれができません。

実際に本番で弾くときは蓋を全開にして弾くことが多いわけですから、普段からその状態に慣れておくことに全く損はないと思います。
グランドピアノを持っているのにその道具を生かさないのは勿体無いので是非試してみてね。

どうしても蓋が開けない場合は、イメージを膨らませるしかないと思いますが、
たまには蓋を開けて練習できる場所を借りて練習して、響きのイメージを自分の頭に刷り込むことも大事だと思います。