夏のピアノコンクール前ということで、
昨日は9名の生徒さんの特別レッスンをさせていただきました。
限られたレッスン時間の中で、
曲に関する音楽的なことを教えつつ、音楽人生を豊かにする根本的なことまでバランスよく伝えるのはなかなか難しいのですが、
生徒にそれを強制するのではなく
「こういう考え方もあるよ」という感じで生徒の視野を広げるようなレッスンにしています。
特に子どもたちの場合、指だけで弾けてしまう人が多いので
頭から足の先まで全身の内側をよどみなく流れているエネルギーを意識して(「手〜肩甲骨まで意識」では足りない)、
指と鍵盤が触れているところから身体の外側へエネルギーが出ていくイメージを持って、
その響きを会場の後ろの方で聴いているような耳を持つ。
…ことを教えたのですが、
これって本当に理想論で、私も人生をかけてその質を高めていっている最中だし、
世の中のプロを見ても全てを良い質で感じられる人って実はあまり見たことがない。笑
ピアノをやっているほとんどの人が気付いてない。
でも、そこを意識することを教えるだけで子どもの視野は確実に広がる。
少しずつでも生徒さんたちは “音楽家” に成長していく。
レッスンしていても非常にやり甲斐がある生徒さんたちばかりで、
レッスンが終わったあとに生徒さんが保護者のもとに駆け寄って
「楽しかったぁ!」
と言ってくれた時の幸せは本当に大きい。
生徒さんが「楽しい」と感じられたのは、
生徒さんにやる気があって、普段ついている先生が地道にレッスンしてくれたからだ。
コンクール前のレッスン
コンクール前のレッスンは、
「コンクールまであとどれくらいあるか」によって伝える内容は変わってきますが、
私のレッスンでは表面上の楽譜のこととか弾き方だけを伝えることは絶対にしません。
音楽の根本から教えて、生徒さんが1人でも応用できるような伝え方をします。
昔から、表面的な弾き方だけ教えて「何故それをやるのか」を教えることができない数多くの先生方をみて疑問に思ってたんですよね。
なので、自分はちゃんと「何故それをするのか」の部分まで教えるようにしています。
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コンクールとは関係ないが、単発レッスンでいまだに忘れられない生徒さんが1人いる。
その子は当時高校生。
高校生活と吹奏楽に夢中で、ピアノに全く興味がないけど特別レッスンを受けさせられた…という感じの子だった。
彼女の演奏からは「ピアノに全く興味がありません」とか「なんでわたしピアノ弾いてるんだろう」みたいな意思が伝わってきた。
3〜40分のレッスンで信頼関係をできるだけ築いて、曲に関する音楽的なことを教えていくことはかなり難しくて焦ってしまったんだけど、
最後は
「好きなことを好きなだけやったらいい。ピアノじゃなくてもいい。でも、音楽は人生の辛い時に自分を助けてくれる存在だから、ピアノを弾けることは財産になるよ。」
みたいなことを言った(こんなにまとまってなかったけど)。
その時は一瞬だけ彼女の心がこちらに出てきそうになったけど
結局最後まで心が通じることはなかった気がする。
あの時は本当に、自分の無力さというか未熟さを感じた。
今の自分があの時に戻ってレッスンするとしたら、曲に関することを話す前に彼女の吹奏楽の話を聞くことから始めるかもしれない。
レッスンの仕方は生徒さん1人1人で変わるのはもちろんだけど、
もっともっと生徒さん主体でありつつ音楽の素晴らしさと奥深さを伝えていきたいと思う。