エッセイ

チェリスト山崎伸子先生に言われたこと

大学時代からチェロの山崎伸子先生にはめちゃくちゃお世話になっていて、
イスラエルから帰ってきたときの帰国記念リサイタルは先生も聴きに来てくださいました。

山崎先生から学んだことはとてつもなく大きいのですが、
1つ思い出したエピソードがあるのでご紹介します。

学生のとき、チェロの山崎伸子先生のリサイタルに行った後日、

山崎先生に
「ピアニストどうだった?」
と聞かれた。

私は正直に「音が物質的で伸子先生の音には合っていなかった」と言ったら、

「彼女はこれから成長するから長い目で見て応援してあげて」と仰って、

器の大きさに心の底から感動した。

演奏家として、
《長い目で見て応援してもらえる》というのがどれだけ心の支えになるか。

山崎伸子先生は、
私の意見は受け止めた上で、違う視点から私を諭した。

ああいう人が「先生」と呼ぶに相応しいなぁ、と当時の私は思ったのでした。

器の大きい人間になりたい!

共演したピアニストは完璧と言っても良いくらい「弾けていた」のですが、
私には「ピアノを弾いている」という印象でした。

「歌っている」とか「自分の声として表現している」

という印象は全く受けなかったんです。

逆に、山崎伸子先生のチェロは歌そのもの。

チェロは人間の声に近いということもあって、本当に感動する演奏だった。

私は固い音を出すピアニストが好きではないので、その当時はすこし棘のある言い方になってしまったのですが、

山崎先生はそれを察してすぐに

「うん。わかるけど、演奏家の人生は長いから聴く人も長い目で見て応援してあげることが必要なのよ」と、

山崎先生を知る方ならわかってくれるであろう、あのサバサバして気持ちの良い言い方をされていた。

私は一瞬で「その通りだなぁ」と納得した。

私の言っている意見は受け入れつつ、さらに広い視野で物事を考えていた先生はやはり素晴らしいな、と思ったのでした。