楽譜

ショパンの自筆譜・出版譜について【ショパンは特殊!】

先日こういうツイートをしました。

【自筆譜が見たい!】
ショパンのエチュードop.10-4って自筆譜残ってないですよね…?

ショパンは初版が3つあるし、
出版されてる楽譜だけでも私が知る限り30種類くらいあるので、どの楽譜を信頼するかってすごい重要だけど、

だからこそ、
弾く人も聴く人も「音楽の全体」を感じたいところ。

2枚目の写真の部分は、
最初も戻ってきた時もデクレッシェンドの版と、1回目クレッシェンドで2回目はデクレッシェンドの版もある。

コンクールなどで審査する人は、
1つの版に固執せずに音楽全体を聴いて判断することが特に必要なのがショパン。

ショパンの自筆譜・出版譜について

ショパンはドイツ・イギリス・フランスの3つの国で3つの初版を出版しています。

まずこの時点でカオス。
初版は3つともショパン自身が手をかけているので”正しい”のですが、書いてある音や表現が全然違う。

そして、他人による筆写譜はもちろんのこと、ショパンの弟子が校訂した楽譜や、
初版にショパン自身が書き加えた楽譜もあって、

もう何を信じていいのやら人間不信ならぬ、楽譜不信になります。笑

日本ではパデレフスキ版とエキエル版が主流だが…

日本ではパデレフスキ版に対する信頼が篤い。

エキエル版も、ショパン国際ピアノコンクールの活動もあって普及してきた。

しかしショパンの場合、あまりにも楽譜事情が特殊なので、
出来るだけ自筆譜や初版を自分の目でみて確かめることが必要。

なぜなら、そうすることで演奏に納得感が得られるからだ。

そして、
1つの楽譜に固執することで聴衆としても限られた表現しか認めなくなる可能性があるからだ。

楽譜の選び方クラシック音楽において、 傑作として世の中に残っている作品はバージョンの違う複数の楽譜が存在します。 例えばショパンの場合、...

ショパンは楽譜によって表現が変わりすぎる

どの楽譜を選ぶかによって、その楽譜から得られる音楽的な情報が違うため多種多様な演奏が生まれます。

聴く側もそれを理解していないと音楽を楽しめません。


特に、コンクールの審査で審査する先生が楽譜を1つしか知らないという状況だとしたら「楽譜と違うことを弾いている!」と勘違いして決めつけてしまう可能性が大いにあります。

色んな楽譜があって色んな表現があることを先生方にこそ知っておいて欲しい。

あまりにも演奏が多種多様だから、ショパン国際ピアノコンクールではエキエル版を推奨して少し狭めているのではないかと私は個人的に推測しています。
もちろん理由の大部分はビジネス的なこと(楽譜を買ってほしいってこと)だとは思いますが。

表情記号が少し変わるだけでまるで違う曲になる

例えば、スラーの位置。

文章の句読点と同じで「どこで区切りをつけるか」「どこで息を吸うか」を変えるだけで
全く違うメッセージや印象になります。

そして、上記の「楽譜の選び方」の記事でも書いたように、
同じ音でも♭で書かれているか、♯で書かれているかは、
その音楽的な響きの意味することが全く違うのです。

fやpやクレッシェンド・デクレッシェンドといった音楽的にわかりやすい違いはすぐわかると思いますが、
スラーや臨時記号によっても音楽的な意味が変わってきます。

たまに信頼できない楽譜だと♯調を♭調に書き換えてしまっているのがありますが、
そういう楽譜には気をつけてください!

使う楽譜を決めたなら、それを信頼して音楽的に表現

出版されている全ての楽譜(30種類以上ある)を見比べるのははっきりいって不可能に近いですが、
私としてはできるかぎり自筆譜は見ておきたいと思っています。

というのも、エキエル版、パデレフスキ版、ヘンレ版、ウィーン原典版…と見比べていくと、
どうしても自筆譜を自分で確かめたくなる衝動に駆られるからです。

自分で確かめないと信用できないんです。笑

自筆譜をちゃんとみることで、納得して1つの楽譜を選べます。

エヴァ・ポブウォツカ先生の言葉

「1つの楽譜に決めたなら、他の楽譜の表現と混ぜてはいけない」
これはポーランドのエヴァ・ポブウォツカ先生の言葉です。

この言葉を聞いたときは「ふーん、なるほどそういうもんなのかなぁ」くらいに思ってました。
(というか、エヴァ先生の演奏を聴いたら納得せざるを得ない。笑)

ショパン自体が自由だったし即興で楽譜どおり弾かないこともあったし…、

でも、音や表現の違いによって全く音楽が変わってしまうことはわかるので、
色々な楽譜に書かれている自分の好きな表現だけを混ぜてしまうと一貫性のない音楽になる可能性はある。

ショパンがその楽譜で表現して欲しかったことから離れる可能性はある。

まとめ

今回伝えたかったのは、

・自分で納得して楽譜を選ぶこと

・聴く側としては色々な演奏を許容できる心と頭のスペースを残しておくこと

この2点です。

自筆譜や初版が見られるサイト