ピアノを弾く皆さんはおそらく、
自分が弾く曲を以前に聴いたことがあるでしょうし、
練習している最中にも他人の演奏を聴きますよね。
今日は、他人の演奏を聴くことの重要性についてと、
他人の演奏から何を得ていけば良いのか、
私の考えをシェアします。
他人の演奏を聴いて得られるもの
これはシンプルです。
- 自分が好きだと思う演奏や表現を知ることができる
- 違和感を感じるところや「自分ならそうは弾かずにこう弾く」という所が出てくる
↓
好きな所はどんどん真似して自分のものとして消化できて、
違和感のある所や嫌いな所を知ることで自分の個性を認識できる
きっと1番目は誰でもできると思います。
「あーいいなぁ!」とか「好きだなぁ」と思う部分は自然に出てくると思うので。
でも、一人の演奏を聴いてそれが出てくるとは限りません。
同じ曲を色んな人の演奏で聴いてみてください!
良い演奏を判断するためには多少の音楽的な知識が必要ですが、
自分が好きな演奏を知るためには知識よりも色んな人の演奏を沢山聴くことが必要です。
沢山の演奏を聴くことで自分がどういう表現が好きなのかわかる
↓
音楽や楽譜の読み方の勉強をしていくと良い演奏かどうかがわかる
↓
沢山演奏を聴くことでそれぞれの演奏家の表現を”違い”を、
「好きか嫌いか」だけではなく、楽譜に書かれていることと照らし合わせて
「良いか悪いか」を判断できるようになる。
たまに見かけるのですが、
自分の好きな演奏家の演奏を「正しい」と思ってしまって、
それを基準に他人の演奏を批判する
という間違いをおかしている方がいます。
そういう方は、
「自分の『好き・嫌い』は、
世の中の『良い・悪い』と同じではない可能性もある」と認識して、
音楽の勉強や楽譜からの学びを大切にして欲しいです。
私の体験エピソード
本来、先生というのは「良い・悪い」の部分を言語化して論理的に説明できる人のことです。
以前とある地方の大御所の先生が演奏会の後、
「チョ・ソンジン素晴らしい!やっぱりああじゃないと!全てに説得力がある!」みたいなことを仰っていて、
それに対して私は「先生という立場でも『好き』という感情だけで話すことがあるんだな」と思いました。
というのも、その演奏を私も聴きましたが、
その時のチョ・ソンジンの演奏は楽譜通りではない部分が沢山あったのです。
楽譜を知らなくとも、音楽的なエネルギーが自然な方向性とは逆だったりして私はたくさん違和感を覚えました。
きっと全世界ツアーで同じ曲を弾きすぎて楽しめなくなってきてから表現を逆に弾いてみたりして楽しんでたと思うのですが、
それによって音楽の説得力は落ちてしまってたんですよね。
その大御所の先生をみて、
「私は自分は感情と論理を切り離して考えられる人間になろう」と思ったのでした。
演奏家の思考
感動できるというのはステキなことなのですが、
もしかしたら上記の体験は、
演奏家という土俵に立っている人間とそうではない人間の違いなのかもしれません。
演奏家は、意識的に考えていなくとも「自分ならどう弾くか」というのを反射的にやってしまう生き物なんですよね。
他人の演奏を聴いて「自分ならこう弾くなぁ」というのが出てくる。
これが、他人の演奏を聴く重要性の一つです。
例えば、
他人の意見を聞く時もそうだし、小説や詩集などを読むときも感じると思いますが、
共感する部分や自分の中に取り入れたい感覚や考え方を得られるだけではなく、
共感しない部分、自分の価値観や感覚とは違う部分を知ることで、
自分のアイデンティティーをしっかりと認識できる。
同じことが演奏にも言える。
自分の個性を認識できるのは自分とは違う他人がいるからです。
まとめ
クラシックにおいて自分の個性を出すにはどうすれば良いかというと、
何も奇抜なことをする必要は全くなく、
楽譜を音楽的に深く読んで楽譜通り表現する
これだけです。
なぜなら、
朗読や落語と同じで、
同じことを喋っても話し手によって印象が変わったり個性が出るのと同じで、
あなたがあなたなりに楽譜を読んで演奏する
これだけで自然と個性は出るんです。
もし個性が出てないと感じるなら、その一番の原因は楽譜の読み方が足りていないのだと思います。
https://sanoshimon.com/2016/06/08/%E9%9F%B3%E6%A5%BD%E7%9A%84%E3%81%AB%E6%A5%BD%E8%AD%9C%E3%82%92%E8%AA%AD%E3%82%80%E6%96%B9%E6%B3%95/
長い文章になりましたが、お付き合いありがとうございました!